2026年8月13日から14日にかけて、千葉県は記録的な集中豪雨に見舞われました。千葉市内では複数の観測地点で1時間雨量100ミリを超え、緑区では最大135ミリを記録。わずか半日で、8月の平年1か月分の3倍を超える雨が降りました。
県内では道路冠水や家屋への浸水、車両の被災、交通機関への影響などが相次ぎ、企業や店舗にとっても「水害が発生したとき事業をどう守るか」を改めて考えさせられる災害となりました。
今回の豪雨を教訓に、オフィスや店舗ではどのような対策が必要なのでしょうか。本記事では、2026年8月千葉豪雨で実際に起きたことを踏まえながら、従業員の安全、浸水、営業車、データ、帰宅困難、BCP、そして今後のオフィス・店舗選びについて解説します。
2026年8月千葉豪雨では何が起きたのか
2026年8月13日、千葉県内では局地的な豪雨をもたらす線状降水帯が発生し、気象庁は千葉市、市川市、船橋市、松戸市、柏市など広い地域にレベル5大雨特別警報を発表しました。
その後も非常に激しい雨が続き、県の発表では線状降水帯が計3回発生。「記録的短時間大雨情報」は25回発表されました。
※千葉県、千葉市、気象庁が2026年8月から9月に公表した資料をもとに作成しています。
千葉市の行政報告によると、8月13日から14日にかけて複数地点で1時間雨量100ミリを超え、緑区では最大135ミリを記録しました。短時間のうちに状況が急変する豪雨では、「雨が強くなってから対応する」では間に合わない可能性があります。
今回の豪雨が企業に突きつけた5つの課題
想像以上に早く状況が悪化する
線状降水帯による集中豪雨では、短時間で道路冠水や浸水が発生する可能性があります。営業時間中に判断を始めていては、従業員の帰宅が困難になる場合があります。
道路冠水が営業活動を止める
今回の豪雨では路面冠水による車両被害も多数発生しました。社用車や営業車を日常的に使用する企業では、建物だけでなく車両の避難計画も必要です。
帰宅困難者への対応が必要
千葉県は県庁舎などの県有施設を一時滞在施設として開放し、県有施設全体で約2,700人の帰宅困難者を受け入れました。企業にも従業員を一時的に社内へ留める準備が求められます。
事業所そのものが被災する
千葉市は豪雨後、被災した市内中小企業・小規模事業者を対象とした災害復旧資金制度を開始しました。事業所被害は、企業経営にも直接影響します。
復旧までを考えておく必要がある
道路や施設の被害は発災当日だけで終わりません。豪雨後も道路の復旧や施設閉鎖が続きました。BCPでは「翌日に出社できるか」だけでなく、数日から数週間の事業継続を考える必要があります。
「うちは大丈夫」という判断が危険
普段水害を意識していない場所でも、短時間に排水能力を超える雨が降れば内水氾濫や道路冠水が起きる可能性があります。河川から離れていることだけを理由に安全とは判断できません。
発生当日に企業が直面する状況を考える
気象情報を確認し、在宅勤務への切り替えや店舗営業時間の短縮を検討します。この段階で従業員への周知を開始することが重要です。
入口付近の商品、重要書類、PC、電源機器などを高い場所へ移動します。営業車も冠水しにくい場所へ移動させます。
無理な帰宅を指示せず、社内待機も選択肢にします。従業員の現在地と安否を把握できる連絡体制が必要です。
屋外への移動がかえって危険な場合があります。安全な上階への移動など、その場所で可能な安全確保を優先します。
オフィス・店舗で優先して見直したいリスク
企業防災の重要度を分かりやすく示した独自評価
※公的な危険度ランキングではなく、企業防災上の重要項目を整理するための独自評価です。
対策1 会社・店舗のハザードマップを改めて確認する
最初に行いたいのが、現在入居しているオフィスや店舗の水害リスクを確認することです。
確認する際は洪水だけを見るのではなく、内水、高潮、土砂災害なども確認します。特に市街地では、短時間に大量の雨が降ることで下水道や排水施設が処理しきれなくなり、河川から離れた場所でも道路や敷地が浸水する場合があります。
物件自体が浸水区域外でも、最寄り駅から会社までの道路や地下道が冠水すれば出退勤ができなくなる可能性があります。オフィス防災では建物単体ではなく、周辺の移動経路まで確認することが重要です。
対策2 PC・サーバー・重要書類を床に置かない
1階オフィスや店舗では、わずかな浸水でもパソコン、通信機器、電源、商品、契約書などに大きな被害が出る可能性があります。
重要機器を高い位置へ
サーバーやNAS、ルーターなどは可能な限り床から離します。
- サーバーラックを使用する
- 電源タップを床置きしない
- 重要データをクラウドへバックアップする
紙資料も水害対策
重要な契約書や顧客情報を低いキャビネットへ保管している企業は注意が必要です。
- 重要書類を上段へ移動する
- 電子化を進める
- 別拠点にもデータを保存する
商品を床面から離す
商品や在庫を床に直接置いている場合、浸水時の損失が大きくなる可能性があります。
- 棚やパレットを使用する
- 高額商品を上段へ移す
- 大雨予報時には事前移動する
ビル側設備の位置も確認
室内が浸水しなくても、受変電設備が被災すれば建物全体が利用できなくなる可能性があります。
- 受変電設備の設置場所
- 非常用電源の有無
- 停電時のエレベーター対応
対策3 1階店舗・オフィスは止水対策を準備する
路面店舗や1階オフィスでは、入口や搬入口からの水の流入を想定しておく必要があります。
| 対策 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 土のう | 一般的な止水方法。設置人員と保管スペースが必要 | 店舗入口・搬入口 |
| 吸水式土のう | 通常時はコンパクトで保管しやすい | 小規模店舗・事務所 |
| 簡易止水板 | 短時間で入口を広くカバーしやすい | 路面店舗・ビル入口 |
| 設備のかさ上げ | 浸水しても重要設備への直接被害を軽減 | サーバー・電源・商品 |
対策4 営業車・社用車の「避難場所」を決めておく
営業車を多数保有する企業にとって、車両は重要な事業資産です。駐車場が低い場所にある場合は「大雨時にどこへ移動させるか」を事前に決めておくことが重要です。
冠水した道路への進入は非常に危険です。見た目では水深を判断しにくく、車両が動けなくなるだけでなく、乗員の安全にも影響します。
対策5 「何時になったら帰す」ではなく気象情報で判断する
今回のような集中豪雨では、状況が急速に悪化します。会社として「大雨になったら考える」のではなく、あらかじめ判断基準を作っておくことが重要です。
従業員へ注意喚起
商品・書類の移動
営業時間短縮
安全な場所へ避難
鉄道が止まってから従業員を帰宅させれば、駅周辺で長時間待機することになる場合があります。逆に、道路冠水が始まってから車で帰宅させることも危険です。
早期帰宅、在宅勤務への切り替え、社内待機のどれを選ぶかを状況に応じて判断できるよう、事前のルールづくりが必要です。
対策6 帰宅できない従業員を想定して備蓄する
2026年8月千葉豪雨では、多数の帰宅困難者が発生し、千葉県は県庁舎などの県有施設を一時滞在施設として開放しました。県有施設全体で受け入れた帰宅困難者は約2,700人に上りました。
企業側でも「全員が帰宅できる」と考えず、一定数の従業員が会社で夜を過ごす可能性を想定しておく必要があります。
対策7 データを「事務所の中だけ」に保存しない
PCやサーバーが浸水すれば、顧客情報、契約情報、会計データなど企業活動に必要な情報が失われる可能性があります。
特に社内NASだけに重要データを保存している場合、事務所とバックアップ機器が同時に被災する恐れがあります。
社外にもデータを保存
重要データをクラウドへバックアップし、事務所へ入れなくても業務を再開できる状態を作ります。
別の場所から業務を再開
ノートPCやVPN、クラウド型の業務システムなどを準備し、出社できなくても最低限の業務を継続できる仕組みを整えます。
対策8 小規模企業でもBCPを作っておく
BCPとは、災害や事故などの緊急事態が発生した際に、重要な事業を継続したり、できるだけ短期間で復旧したりするための計画です。
大企業だけのものと思われがちですが、中小企業庁も中小企業に対してBCPの策定・運用を推奨しています。
安全確認
確認
選ぶ
再開
復旧
例えば、「事務所に入れない場合は在宅勤務へ切り替える」「代表電話を携帯電話へ転送する」「顧客データはクラウドから確認する」「従業員の安否確認はこの連絡網を使う」といったルールを決めるだけでも、災害発生時の混乱を減らせます。
2026年8月千葉豪雨を踏まえた物件選びのチェックポイント
これからオフィスや店舗を移転する企業は、駅距離や賃料だけでなく、防災という視点を物件選定に加えることをおすすめします。
| 確認項目 | 物件内覧・契約前に確認したい内容 |
|---|---|
| ハザードマップ | 洪水・内水・高潮・土砂災害の想定区域に該当していないか |
| 入居階 | 1階・地下の場合は想定浸水深と入口の高さを確認 |
| 受変電設備 | 地下や低い場所に電気設備が設置されていないか |
| 非常用電源 | 停電時にどこまで設備を使用できるか |
| 駐車場 | 地下駐車場・低地の場合は車両避難方法を確認 |
| 周辺道路 | 駅や幹線道路までの経路に低い場所がないか |
| 避難経路 | 安全な上階や避難場所へ移動できるか |
| ビル管理 | 災害時の管理会社・オーナーとの連絡体制 |
| 通信環境 | 固定回線が止まった際のモバイル通信などの代替手段 |
| テレワーク | 事務所へ出社できない場合でも業務を継続できるか |
重要なのは、どの程度のリスクがあるのかを理解したうえで、入居階や建物設備、止水対策、避難方法などを確認することです。同じエリアでも建物によって防災性能は異なります。
オフィス・店舗の防災チェックリスト
今回の千葉豪雨をきっかけに、まず以下の項目を社内で確認してみてください。
被災した中小企業向けの支援制度も確認する
2026年8月千葉豪雨では、千葉市も被災した中小企業・小規模事業者向けに「災害復旧資金」の取り扱いを開始しました。
災害によって設備や事業所に被害を受けた場合は、自治体、金融機関、信用保証協会、商工会議所などが設ける支援制度を確認することも重要です。
被災直後は復旧作業を優先しがちですが、罹災・被災状況を写真で記録しておくことや、修繕・買い替えにかかった費用の資料を保管しておくことも忘れないようにしましょう。
まとめ 千葉豪雨を「次の災害への備え」に変える
2026年8月千葉豪雨では、線状降水帯が3回発生し、千葉市では短時間に記録的な雨が降りました。道路冠水、車両被害、事業所への被害、交通機関への影響、多数の帰宅困難者など、企業活動に直結する問題も発生しました。
今回の災害から学べるのは、オフィスや店舗の防災が「水が建物に入らないようにすること」だけではないという点です。
従業員の安全確保、早期帰宅や社内待機の判断、営業車の避難、データのバックアップ、停電・通信障害への備え、在宅勤務への切り替えなどを組み合わせて初めて、企業としての水害対策になります。
また、これからオフィスや店舗を探す場合には、賃料・面積・駅距離・築年数だけでなく、ハザードマップ、入居階、電気設備、駐車場、避難経路なども物件比較の項目に加えることが重要です。
2026年8月千葉豪雨を過去の出来事として終わらせず、自社の防災体制と今後のオフィス選びを見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
参考資料:気象庁「千葉県にレベル5大雨特別警報発表」、千葉県「令和8年9月定例千葉県議会 知事あいさつ」「知事定例記者会見(令和8年8月27日)」、千葉市「令和8年第3回定例会行政報告」「令和8年8月千葉豪雨に関する情報」、中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」ほか。被害状況等は今後更新される可能性があります。
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